ヤドカリプロジェクト#2
木造2階建て・リノベーション・71㎡
前作「がんばり坂の家」と浜松駅の中間程度に立地し、同じ住宅街の中で現在進行中の空き家リノベーション。
ベタ基礎による基礎補強、耐力壁の追加、屋根の軽量化を順次行ってきており、2021年5月には激しい蟻害が発見された台所と浴室のボリュームを解体減築した。その後、外皮の断熱改修や浴室・キッチンなどの整備を行い2023年3月に工事は完了した。
この家には下屋や出窓など「突出したボリューム」がある。これらのボリュームを建築的にどう扱うかが一つの主題でもあった。家の中心的な空間は1階の土間だが、「突出したボリューム」が土間と外部環境をそれぞれ異なる方法で関係づけることで、建築全体の豊かさを引き立てられると考えた。
敷地の東には2mほど高い隣地との間に擁壁がある。減築により生まれた屋外空間は「囲われた庭」となっている。東の下屋には屋外からも使える全面開口のキッチンを整備し、このプライベートな庭と擁壁に静かに向き合える空間とする。西側には出窓があるが、東側とは逆に隣地が低く視線の抜けを確保できるため、地袋を撤去し掃き出し開口として出窓を「額縁」のように設える。北側には出窓や下屋はないが、小さな窓を設けることで土地や外部との関係性を相対化させる。そして2階は、土間と空との関係を取り持つ。
南の下屋はアプローチの突き当たりでもあり、近隣や来客を受け入れるこの家の態度を表象する空間となる。既存の洋間を解体して屋根だけ残した大らかな軒下空間とする。畳敷きだった1階の和室は、床を撤去してベタ基礎補強をしたのち、そのまま土間として使っているが、土間のレベルは周辺地盤より少し下げている。これは、床下の土を鋤き取って増設基礎の重量を相殺するためでもあるが、路地を下るアプローチのシークエンスを踏まえ「地形を建築に引き込む」選択をしたことも理由として大きい。
Credit | |
意匠・設備・構造設計監理 | 白坂隆之介|REGION STUDIES Inc. |
施工 | 松田浩昌|松工務店 |
受賞 | |
第7回日本エコハウス大賞・奨励賞(自邸・モデルハウス部門) | |
2023年度グッドデザイン賞受賞・BEST100入選(ヤドカリプロジェクト) |
掲載 | |
中日新聞 | 2020年1月23日 朝刊 |
日経BP | 「ひとまち結び」 |
静岡新聞 | 2021年8月26日 夕刊 |
静岡新聞 | 2022年6月21日 朝刊 |
日経アーキテクチュア | 2023年3月23日号 |
建築知識ビルダーズ | 第54号 |
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