木造平屋建て・新築・95㎡
これまでいくつかの空き家のリノベーションに関わってきた。
今回は新築プロジェクトだけれど、クライアントからご連絡を頂いたきっかけは、私たちが進めている空き家改修の取り組みだった。結果的に新築になったものの、当初は空き家付きの物件を探すところからご協力が始まっている。
空き家改修の取り組みを通じて私たちが考えている「家は長く住み継がれるべき」という思考に、今回のクライアントも共感して下さっている。設計を進める中で「お子さんが巣立たれたりして世帯構成が大きく変わったあと、家をどう運用するか?」という点も一緒に考え、検討してきた。
数十年後、ご夫婦だけの世帯になって部屋を間貸しするとか、あるいはさらに先、家を手放して別の方に売却されるとき、次に家を使われる方がどのように家に手を加えられるのか、といったことも含めてスタディしている。
設計者が、自分の設計した建築が長く使われるようなものであって欲しいと願うことや、一つの用途に限らず様々な使われ方ができるような汎用性のあるプランを思考するのはありふれたことと思う。しかし、こうした視点を共有しうる施主層が出現しているということは、空き家問題など都市が縮小していくのを目の当たりにしている現代ならではの共時性なのかもしれない。
これまで、新築の設計とリノベーションの設計で、それぞれ全く思考が異なっていたのだが、この住宅は新築にもかかわらず最初からリノベーションをしているような感覚で、2つの思考を統合するきっかけになった。新築でもリノベーションでも、ひとつの建築のリレーの走者として関わるという意味では違いがない。この住宅は、「リレーの起点」として設計させて頂いた、私たちのキャリアの上でもとても重要な作品になった。
欧米では何世紀にも亘って、リレーのバトンのように建築が使われ続けていくのが当たり前になっている。この住宅も、リレーのように長く使い継がれたらと願う。
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意匠・設備・照明設計監理 | 白坂隆之介|REGION STUDIES Inc. |
構造設計監理 | 須藤崇|yAt構造設計事務所 |
施工 | 大林剛・田口良太朗|丸中建設 |
写真 | 大塚敬太 (*のみ 白坂隆之介|REGION STUDIES Inc.) |
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